2026年相続税改正で「貸付不動産51%減」スキームが崩壊|家族に重税を遺さないための対策ガイド
「貸付用の不動産を買って、評価額を51%下げる」——この節税スキームが、2026年度の相続税改正で事実上使えなくなります。
ダイヤモンド・オンライン(2026/04/07)が「数千万円単位の増税を」と報じたニュースは、相続税対策を考えてきた家庭にとって小さくない転換点です。親世代がアパートやタワーマンションを買って相続対策をしてきた——そんな家庭で、計算し直さなければならないケースが出てきます。
この記事では、2026年改正の中身・何が変わるのか・改正後に残されている節税オプションを、フリーランス・副業の親世代に向けて整理します。相続税の基本をまだ押さえていない方は、あわせてEPの相続税シリーズも参照してください。
2026年改正の全体像:何が・いつから変わるのか
まず、改正の3つのポイントです。
- 貸付用不動産の評価差スキームに制限(市場価格と相続税評価額の乖離を利用した圧縮が抑制)
- 相続手続きの一括対応(銀行・証券大手7社で隠れ口座の照会も可能に)
- 相続税の申告対象者がさらに増加(地価高騰で熊本など地方でも追徴額が5年で1.6倍)
1つ目が今回の主役です。残りの2つは、改正にあわせて同時期に動いている「相続の現場の変化」として押さえておく価値があります。
いつから適用されるのか
2026年度改正は、2026年1月1日以後の相続から段階的に新ルールが適用される見通しです。すでに購入済みの物件にも影響するケースがあるため、「うちは関係ない」と早合点しないことが重要です。
「貸付不動産51%減」スキームとは何だったか
改正の影響を理解するには、そもそも「なぜ51%下がったのか」を知る必要があります。
相続税評価額が下がる仕組み
貸付用の不動産は、自用の不動産より相続税評価額が低くなります。ざっくり言えば、以下の3段階で圧縮が効く仕組みでした。
| 圧縮要素 | 効果(目安) |
|---|---|
| 路線価 × 借地権割合・借家権割合 | 評価額を約21%減 |
| 貸家建付地の評価減 | さらに約18%減 |
| 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地) | さらに50%減 |
3段階を重ねると、市場価格1億円のアパートが相続税評価額では約4,900万円、つまり51%減になる計算です。現金1億円を持っているより、アパートに変えて相続したほうが税額が大幅に下がる——これが「王道の節税」でした。
「タワマン節税」との関係
タワーマンションの上層階を買う「タワマン節税」も、構造は同じです。市場価格と相続税評価額の乖離が大きい物件ほど圧縮効果が高い。国税庁は2024年にタワマン節税に先にメスを入れ、評価ルールを見直しています。
今回の2026年改正は、タワマン以外の貸付不動産全般に同様の考え方を広げる流れです。
新ルールで増税となる典型ケース
ダイヤモンドの報道や過去の国税庁通達の流れから読み取れる、増税になりそうな典型ケースは以下です。
ケース1:築古アパートで圧縮していた家庭
親世代が「相続対策で」と築20年以上のアパートを購入していたケース。建物の減価償却が進んでいるため、実質的な市場価格との乖離が大きく、今まで最も効率よく圧縮が効いていた物件タイプです。
改正後は、市場実勢との乖離が大きい物件ほど、評価額の積み上げ補正が入ると見られています。
ケース2:相続直前に駆け込みで購入したケース
亡くなる数年前に慌てて貸付用不動産を購入したケースは、従来から「短期所有」として節税効果を否認される判例がありました。改正後はこの基準が明文化・厳格化される見通しです。
ケース3:サブリース契約で満室偽装していたケース
入居率が低いのに、サブリース契約で「満室扱い」にして評価減を取っていたケース。こちらは改正以前からグレーゾーンでしたが、税務署の否認事例が増えると予想されます。
改正後に残されている節税オプション
「じゃあ何もできないのか」というと、そうではありません。改正後も使える節税オプションは残っています。
オプション1:生前贈与の活用
2024年の改正で、相続前7年以内の贈与は相続財産に加算されるルールに変わりました(旧ルールは3年)。それでも、早い段階から計画的に贈与していれば、加算対象外にできる資産は残ります。
年間110万円の非課税枠に加え、相続時精算課税制度も新しく年110万円の基礎控除が新設されているため、組み合わせの設計余地があります。
オプション2:生命保険の非課税枠
死亡保険金には「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠があります。現金で相続するより、保険に振り替えることで法定相続人4人なら2,000万円の非課税枠が生まれます。この制度は改正の対象外で、今後も使えます。
オプション3:小規模宅地等の特例(自宅版)
自宅の土地を同居親族などが相続する場合、330㎡まで評価額80%減の特例が使えます。貸付事業用とは別枠のため、改正の影響は小さいと見られています。都市部に自宅を持つ家庭では、この特例の条件を事前に整えておくことの重要性がむしろ増しました。
オプション4:配偶者の税額軽減
配偶者が相続する場合、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い額まで相続税がかかりません。一次相続・二次相続のバランスを考えた分割設計は、これからも有効です。
「銀行・証券大手7社が一括対応」の新サービス
改正とあわせて押さえておきたいのが、相続手続きの実務効率化です。
日本経済新聞(2026/04/07)によると、大手銀行・証券会社7社が連携し、相続人が各金融機関を個別に回ることなく一括で口座照会・手続きができる体制が整いつつあります。
何が便利になるのか
従来の相続手続きでは、亡くなった方が口座を持っている金融機関すべてに、個別に書類を出す必要がありました。「どこに口座があるかわからない」場合は、全ての銀行に総当たりで照会する——これが相続の実務で最も手間のかかる工程の1つです。
新サービスでは、隠れ口座の照会までまとめて依頼できるため、遺族の負担が大幅に下がります。
注意点:便利さと引き換えにリスクもある
一括照会は便利ですが、「見つけたくなかった口座」まで露見する可能性があることも知っておくべきです。例えば負債のある金融機関の口座が出てきた場合、相続放棄の判断が必要になるケースもあります。
負債を含めた相続の判断については、以下の記事が参考になります。
親世代と話すべきチェックリスト
改正を受けて、親と一度話しておくべき項目を整理しました。
- 貸付用不動産を持っているか(アパート・マンション・駐車場)
- 購入時期はいつか(改正の影響を受けるか)
- 自宅の名義は誰か(小規模宅地等の特例を使えるか)
- 生命保険の受取人設定は適切か
- 生前贈与を計画的に始めているか
- 財産目録(通帳・不動産・証券)の一覧があるか
- どの税理士に相談すればいいか目星がついているか
「うちは関係ないはず」と思っている家庭ほど、ざっくりでいいので概算の相続税をシミュレーションしてみることをおすすめします。
EPでは、数分で概算が出せる無料ツールを用意しています。
相続税は「10人に1人」から「もっと多くの人」の税になった
最後に、相続税の対象者が拡大している事実を数字で押さえておきます。
国税庁の統計では、相続税の課税割合(亡くなった方のうち相続税の対象となった割合)は9.9%前後で推移してきました。しかし2026年4月にPR TIMESで発表された地方データ(熊本)では、地価高騰により相続税申告対象者数が過去最多、平均追徴額は5年で1.6倍になっています。
都市部だけの話ではなく、地方でも相続税は「自分事」になりつつあります。既存のEP記事で、都道府県別・国際比較の数字を確認できます。
- 相続税は10人に1人の時代へ|都道府県別の課税割合データ【最新統計】
- 日本の相続税は世界一高い?|日米英の税率・控除額を公的データで比較【2026年最新】
- 「うちは相続税、関係ないでしょ?」が一番キケンな思い込みである理由
迷ったら、まず税理士に相談する
改正の内容は複雑で、自分の家のケースがどう影響を受けるかは、一般論だけでは判断しきれません。ここは相続に強い税理士に一度相談しておくのが一番確実です。
初回相談無料のサービスを使えば、費用をかけずに「自分の家は改正の影響を受けるのか」「どのオプションが使えるのか」の方向性を把握できます。相続に強い税理士を探したい方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスで相談するのも選択肢の一つです。
相続税の申告を自分でやるか税理士に頼むか迷っている方は、判断基準を整理した記事も参考になります。
参考資料
- ダイヤモンド・オンライン「【2026年 相続税が変わる】『51%減』の節税対策が崩壊?」(2026/04/07): https://diamond.jp/articles/-/386317
- 日本経済新聞「相続手続き、銀行・証券大手7社が一括対応 隠れ口座も照会可能に」(2026/04/07): https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB015BU0R00C26A4000000/
- PR TIMES「【熊本・地価高騰の光と影】相続税の申告対象者数が過去最多を記録」(2026/04/07): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000057.000048237.html
- 国税庁「相続税の申告事績の概要」: https://www.nta.go.jp/
エム
IT業界で10年以上の実務経験を経てフリーランスに。青色申告・開業届・相続手続き・資産運用など、お金まわりの実体験をもとに発信しています。
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