日本の相続税は世界一高い?|日米英の税率・控除額を公的データで比較【2026年最新】
日本の相続税の最高税率は55%で、主要先進国のなかで最も高い水準です。一方、アメリカでは2025年の法改正により約24億円まで非課税となり、日本との格差がさらに広がりました。
この記事では、日本・アメリカ・イギリスの3カ国の相続税制を、税率・基礎控除額・資産規模別の納税額シミュレーションで比較します。「日本の相続税は本当に高いのか?」をデータで検証します。
3カ国の相続税率と基礎控除額を一覧で比較すると?
結論から言うと、日本は「税率が高く、控除額が小さい」という二重の負担構造です。
| 項目 | 日本 | アメリカ(連邦) | イギリス |
|---|---|---|---|
| 最高税率 | 55%(8段階の累進) | 40%(定率) | 40%(定率) |
| 基礎控除額 | 4,800万円(配偶者+子2人の場合) | 約23.9億円(1人あたり$15M) | 約1.1億円(NRB+RNRB合算) |
| 夫婦合算の控除 | なし(配偶者控除は別制度) | 約47.7億円 | 約2.1億円 |
| 課税方式 | 法定相続分課税方式 | 遺産課税方式 | 遺産課税方式 |
出典:国税庁、IRS(米国内国歳入庁)、HMRC(英国歳入関税庁)の各公式資料。為替レートは2026年4月時点(1ドル=159円、1ポンド=211円)で換算
日本の基礎控除4,800万円に対し、アメリカは約23.9億円。約50倍の差があります。
アメリカの「24億円まで非課税」は本当か?
本当です。2025年7月に成立した「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」により、連邦遺産税の免税枠が大幅に拡大・恒久化されました。
| 年度 | 1人あたりの免税枠 | 日本円換算 | 根拠法 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | $13,610,000 | 約21.6億円 | TCJA(インフレ調整) |
| 2025年 | $13,990,000 | 約22.2億円 | TCJA(インフレ調整) |
| 2026年〜 | $15,000,000 | 約23.9億円 | OBBBA(恒久化) |
出典:Morgan Lewis「Estate Tax Alert: New $15 Million Federal Exemption Becomes Law」
さらに、夫婦であれば「ポータビリティ」という制度を使い、先に亡くなった配偶者の未使用枠を引き継げます。結果として、夫婦合算で約47.7億円($30M)が非課税になります。
ただし注意点があります。アメリカには連邦税とは別に州レベルの遺産税・相続税を課す州が存在します。
| 州名 | 種類 | 免税枠 | 最高税率 |
|---|---|---|---|
| オレゴン州 | 遺産税 | $1,000,000(約1.6億円) | 16% |
| ワシントン州 | 遺産税 | $2,193,000(約3.5億円) | 20% |
| ニューヨーク州 | 遺産税 | $7,350,000(約11.7億円) | 16% |
出典:Mercer Advisors「Which States Have Inheritance Tax」
「アメリカは非課税」という話は連邦税に限った話であり、居住する州によっては数億円規模でも課税されます。
イギリスの相続税はなぜ「ステルス増税」と呼ばれるのか?
イギリスの相続税(Inheritance Tax)は一律40%。税率だけ見ると日本より低いですが、基礎控除額が2009年から17年間据え置きされています。
| 項目 | 金額 | 日本円換算 |
|---|---|---|
| 基本控除(NRB) | £325,000 | 約6,860万円 |
| 居住用追加控除(RNRB) | £175,000 | 約3,690万円 |
| 1人あたり合計 | £500,000 | 約1億550万円 |
出典:GOV.UK「Inheritance Tax — thresholds」
物価と住宅価格が上昇し続けるなか、控除額を固定し続ける。これが「ステルス増税」と呼ばれる理由です。イギリス政府は2030/31年度まで控除額を据え置くことを発表しており、課税対象者は今後さらに増加すると見られています。
同じ資産でも、国によって税額はどれだけ違う?
法定相続人が子ども2人の場合のシミュレーションです。
| 資産総額 | 日本の納税額 | アメリカ(連邦)の納税額 | イギリスの納税額 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 20万円 | 0円 | 0円 |
| 2億円 | 3,340万円 | 0円 | 約3,780万円 |
| 10億円 | 2億8,600万円 | 0円 | 約3億5,780万円 |
| 30億円 | 12億3,100万円 | 約2億4,600万円 | 約11億5,000万円 |
前提:日本は基礎控除4,800万円・小規模宅地特例なし。アメリカは連邦税のみ(州税なし)。イギリスはNRB+RNRB適用。為替は2026年4月時点
資産10億円のケースが象徴的です。日本では約2.9億円、イギリスでは約3.6億円の税金がかかる一方、アメリカでは免税枠内のため納税額ゼロです。
この差は「国としての考え方の違い」を反映しています。
- 日本: 富の再分配を重視。少子高齢化に伴う社会保障費の財源として課税ベースを広げる方向
- アメリカ: 資本の蓄積による経済の活力維持を優先。次世代への円滑な資産移転を後押し
- イギリス: 控除額の据え置きによる消極的な増税。財政再建を優先
相続税がない国はどこ?
OECD加盟国のうち、相続税・遺産税をそもそも課さない国が複数あります。
| 国名 | 廃止年 | 備考 |
|---|---|---|
| オーストラリア | 1979年 | 連邦・州ともに廃止 |
| カナダ | 1972年 | みなし譲渡益課税(キャピタルゲイン税)で代替 |
| ニュージーランド | 1992年 | 完全廃止 |
| スウェーデン | 2005年 | IKEA創業者の国外脱出等が背景 |
| オーストリア | 2008年 | 違憲判決を受けて廃止 |
| ノルウェー | 2014年 | 富裕税は存続 |
「相続税がない=資産移転が完全に非課税」とは限りません。カナダのようにキャピタルゲイン税で実質的に課税するケースもあります。
日本の相続税は今後さらに上がるのか?
2015年の基礎控除引き下げ以降、日本の相続税の課税割合は年々上昇しています。
| 年 | 課税割合 |
|---|---|
| 2014年(改正前) | 4.4% |
| 2015年(改正後) | 8.0% |
| 2020年 | 8.8% |
| 2024年 | 10.4% |
出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績」
約10人に1人が課税対象となった現在、追加の改正の議論が進む可能性があります。
- 暦年贈与の持ち戻し期間は2024年以降、3年から7年に延長済み
- 教育資金一括贈与の非課税制度は終了
- 社会保障費の増加により、課税ベースの縮小は考えにくい
まず自分の場合はどうか?を確認する
国際比較で見ると日本の相続税は高い水準にあります。しかし、配偶者控除(1.6億円まで非課税)や小規模宅地等の特例(土地評価額80%減)を正しく使えば、実質的な負担を大きく下げることは可能です。
まずは「自分の家の場合、いくらになるのか」を把握するところから始めてみてください。
- 概算を知りたい方 → 相続税かんたんシミュレーションで試算できます
- 申告を自分でやるか迷っている方 → 相続税申告は自分でできる?税理士に頼むべきケース
- 手続きの全体像を知りたい方 → 親が亡くなったらやること完全ガイド
日本の相続税率は何%?
10%から最高55%の8段階の累進税率です。6億円を超える法定相続分に対して最高税率55%が適用されます。これは主要先進国のなかで最も高い水準です。
アメリカで相続税がかかるのは資産いくらから?
2026年以降、連邦レベルでは1人あたり$15,000,000(約23.9億円)を超える遺産に対して課税されます。夫婦の場合、ポータビリティ制度を使えば約47.7億円まで非課税です。ただし、州レベルで別途遺産税がかかる場合があります。
相続税がない国に移住すれば非課税になる?
日本の税法では、相続人または被相続人のいずれかが日本に居住している場合、世界中の資産が課税対象になります(全世界課税方式)。過去15年以内に日本での居住歴がある場合も対象となるため、移住だけで非課税にすることは現実的には困難です。
この記事で引用したデータの出典:
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(2025年12月)
- IRS「Estate Tax」
- GOV.UK「Inheritance Tax — thresholds」
- Morgan Lewis「Estate Tax Alert: New $15 Million Federal Exemption Becomes Law」
- 財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」
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IT業界で10年以上の実務経験を経てフリーランスに。青色申告・開業届・相続手続き・資産運用など、お金まわりの実体験をもとに発信しています。
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