個人事業主の廃業率データ|2024年の休廃業6.9万件と生存率の実像【公的統計まとめ】
「個人事業主って、10年続く人は1割しかいない」——ネットでは、こんな話をよく目にします。
でも、この数字の出典を探してみると、公的統計に根拠がなく、二次・三次ソースが繰り返し引用されているだけのケースがほとんどです。
独立を考えている方が本当に知りたいのは、煽りの数字ではなく実際の廃業率と生存率のデータのはず。
この記事では、中小企業庁「中小企業白書」、帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査」、日本政策金融公庫「新規開業実態調査」という公的・準公的な一次データをもとに、個人事業主・フリーランスの廃業率と生存率を整理しました。
2023年度の開業率・廃業率はともに3.9%
まず、日本全体の開業率・廃業率を見ておきましょう。
中小企業庁「2025年版 中小企業白書」によると、2023年度の開業率は3.9%、廃業率も3.9%で、2022年度から廃業率だけが上昇し、両者がほぼ同じ水準になっています。
| 年度 | 開業率 | 廃業率 |
|---|---|---|
| 2021年度 | 4.4% | 3.1% |
| 2022年度 | 3.9% | 3.8% |
| 2023年度 | 3.9% | 3.9% |
出典:中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第8節 開業、倒産・休廃業」
開業する事業者と廃業する事業者がほぼ同数という状態です。事業の入れ替わりがゆるやかに続いており、市場全体として新陳代謝は起きているが拡大はしていないという局面にあります。
法人の生存率:1年95.3%、5年81.7%、10年72%
次に、起業後に事業がどのくらい生き残るか、生存率のデータを確認します。
中小企業白書(2017年版および2016年版)では、法人の企業生存率を以下のように示しています。
| 経過年数 | 生存率 |
|---|---|
| 1年後 | 95.3% |
| 2年後 | 91.5% |
| 3年後 | 88.1% |
| 4年後 | 84.8% |
| 5年後 | 81.7% |
| 10年後 | 約72% |
出典:中小企業庁「中小企業白書(2017年版)第2部 中小企業のライフサイクル」
1年後の生存率は95.3%、5年後でも81.7%と高水準です。10年後でも約7割の事業者が生き残っている計算になります。
ネットでよく見かける「10年で9割廃業」「5年で半数が消える」といった数字は、少なくとも日本の法人の公的統計とは一致しません。
ただし注意点が1つあります。この生存率データは法人のみを対象としており、個人事業主は含まれていません。では個人事業主の実態はどうなのか。
個人事業主を含む公的データ:帝国データバンクの休廃業・解散動向調査
個人事業主を含めた廃業の実態を把握できる代表的な調査が、帝国データバンクの「全国企業『休廃業・解散』動向調査」です。同調査は倒産(法的整理)ではなく、自主的な休業・廃業・解散を対象としており、個人事業主も含まれています。
2024年(1月〜12月)の結果が以下の通りです。
| 項目 | 2024年実績 |
|---|---|
| 休廃業・解散件数 | 69,019件(前年比+16.8%) |
| 雇用消失(正社員) | 87,003人 |
| 売上消失合計 | 2兆9,493億円 |
| 資産超過型の割合 | 65.1% |
| 直前期「黒字」の割合 | 51.1%(過去最低) |
| 経営者の平均年齢 | 71.3歳(過去最高齢) |
出典:帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2024年)」
件数は6万9,019件で過去最多、前年比プラス約1万件・16.8%増という大幅な増加となりました。現行基準で集計を開始した2016年以降で最多です。
ただしこの数字の内訳を見ると、少し印象が変わってきます。
「廃業=経営失敗」ではない:黒字廃業51%・経営者71歳
帝国データバンクのデータで注目すべきなのは、廃業した事業者の半数以上が黒字だったという事実です。
- 資産が債務を上回る「資産超過型」:65.1%
- 直前期決算が「黒字」だった割合:51.1%
- 経営者の平均年齢:71.3歳(4年連続で70歳代)
出典:帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2024年)」
つまり、2024年の休廃業6.9万件の過半は「経営に行き詰まって潰れた」ケースではなく、黒字のうちに自主的に事業を畳んでいるケースです。
背景にあるのは高齢経営者の後継者不在問題です。経営者の平均年齢71.3歳は、調査開始以来の最高齢。事業は回っているが、引き継ぐ人がいないから自分の代で店じまいする——そういう決断が全国で積み上がっている状態です。
個人事業主やフリーランスの方が「廃業率」と聞いて怖がる必要は、実はあまりありません。廃業の多くは事業の失敗ではなく、経営者のライフステージの変化で起きています。
個人事業主・フリーランス特有のリスクは「収入の不安定さ」
とはいえ、個人事業主・フリーランスが独立後に直面する課題はゼロではありません。
法人と比較したときの個人事業主の特殊事情として、以下の点は知っておく価値があります。
- 社会保険料の全額自己負担:国民健康保険・国民年金
- 収入の月次変動:会社員のような固定月給がない
- 事業と生活の区分:経費計算や確定申告が必須
- 退職金・失業給付がない:廃業後の生活設計を自前で行う必要
実際、収入の不安定さは最大の課題です。ランサーズ「フリーランス実態調査2024」では、収入に「満足している」と答えたフリーランスは約32%にとどまっています。詳しい数字は副業・フリーランスの年収データで整理しています。
それでも独立を続けるかどうかは、「廃業率の高低」ではなく「生活設計と収入構造」で決まります。この視点が、ネットの煽り記事には欠けている部分です。
日本政策金融公庫の新規開業実態調査で見る開業者の姿
個人事業主・フリーランスの実態を知るうえで、もう1つ参考になるのが日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」です。
同研究所は1991年度から毎年この調査を実施しており、2024年度調査では2023年4〜9月に融資を受けた開業1年以内の企業7,658社を対象にデータを収集しています。
この調査では、開業者の属性・開業費用・開業動機・初年度の売上状況などが経年で比較できる形で蓄積されています。独立を検討している方は、一度日本政策金融公庫総合研究所の調査ページを覗いてみると、客観的な判断材料が得られます。
「10年で9割廃業」の出典はどこにあるのか
ここまで読んで、ネットでよく見る「個人事業主は10年で9割が廃業する」という話とのギャップに気づいた方もいるかもしれません。
結論から言うと、この数字の一次ソースを特定するのは難しい状況です。複数の起業支援系メディアで引用されていますが、元をたどると二次ソース同士の引用が続いており、公的な統計には行き着きません。
公的データでわかっているのは以下の通りです。
- 法人の1年後生存率:95.3%、5年後:81.7%、10年後:約72%(中小企業白書)
- 2024年の休廃業・解散(個人事業主含む):6万9,019件
- 休廃業の半数以上が黒字、経営者平均年齢71.3歳
「9割廃業」の数字に怯える前に、公的データが示す実像を踏まえて判断することをおすすめします。
独立前に押さえておきたい準備項目
廃業率データよりも、独立前に本当にチェックすべきなのは自分の準備状況です。
- 貯金はいくらあるか(独立直後の運転資金・生活費)
- 取引先の見込みはあるか(独立前の人脈)
- 固定費はどれだけ削れるか(家賃・保険・通信)
- 健康保険・年金の切り替え手順を把握しているか
- 確定申告の準備はできているか
これらは「何年続くか」の心配よりも先に向き合うべきポイントです。フリーランスの始め方の全体像はフリーランスの始め方 完全ガイドで解説しています。
自分の独立準備度を客観的に把握したい方には、フリーランス独立適性診断とフリーランス手取り計算機も参考になります。
まとめ:廃業率データが示す個人事業主の実像
- 2023年度の開業率・廃業率はともに3.9%(中小企業白書)
- 法人の1年後生存率は95.3%、5年後81.7%、10年後約72%
- 2024年の休廃業・解散は6.9万件で過去最多(帝国データバンク)
- ただし廃業の51.1%は黒字、経営者平均年齢は71.3歳
- 廃業の多くは「経営失敗」ではなく「後継者不在・高齢化」
- 「10年で9割廃業」は公的統計には根拠がない
個人事業主・フリーランスとして長く続けるかどうかは、廃業率の平均値で決まるものではなく、個別の生活設計と収入構造で決まります。データを正しく読んだうえで、自分の準備を整えることのほうがずっと重要です。
個人事業主の廃業率は何%ですか?
2023年度の廃業率は3.9%(中小企業白書)です。また帝国データバンクの調査では、2024年に休廃業・解散した企業(個人事業主を含む)は年間6万9,019件で過去最多となりました。ただし休廃業の51.1%は直前期が黒字で、経営者の平均年齢は71.3歳と、後継者不在による自主閉鎖が多くを占めています。
個人事業主は何年続きますか?
中小企業白書の法人向けデータでは、起業から5年後の生存率は81.7%、10年後は約72%です。個人事業主を含む完全な生存率データは公的統計に存在しませんが、「10年で9割廃業」といった数字は一次ソースが確認できない俗説の範囲にとどまります。
フリーランスの廃業理由は何が多いですか?
帝国データバンクの調査では、休廃業の主な要因は「経営者の高齢化と後継者不在」です。収入の不安定さやスキルの陳腐化を理由とするケースもありますが、公的統計上は経営者のライフステージ変化が最大要因となっています。
この記事で引用したデータの出典:
- 中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第8節 開業、倒産・休廃業」
- 中小企業庁「中小企業白書(2017年版)第2部 中小企業のライフサイクル」
- 帝国データバンク「全国企業『休廃業・解散』動向調査(2024年)」
- 日本政策金融公庫総合研究所「新規開業に関する調査」
- ランサーズ「フリーランス実態調査2024」(2025年3月)
エム
IT業界で10年以上の実務経験を経てフリーランスに。青色申告・開業届・相続手続き・資産運用など、お金まわりの実体験をもとに発信しています。
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